先端テクノロジー 社会実装プログラム(TIP)支援対象技術が決定しました!

経済産業省 令和6年度コンテンツ海外展開促進事業
(コンテンツ海外展開のための官民連携体制構築事業 )
先端テクノロジー 社会実装プログラム
Technology Implementation Program(TIP)
支援対象技術決定のお知らせ

この度、応募技術および推薦技術の中から厳正な審査により、以下の4件が「先端テクノロジー 社会実装プログラムTechnology Implementation Program(TIP)」における支援技術として採択されました。

採択された技術は、国内外の先端コンテンツ技術とクリエイターや開発パートナーとのマッチングの場である「INTER BEE IGNITION × DCEXPO」(会期:11月13日(水)~15日(金))に出展する予定です。

皆様ぜひ「INTER BEE IGNITION × DCEXPO」にご参加いただき、新しい研究やテクノロジーをご体験ください。また、こちらの技術について詳しく知りたい、体験したい、活用したい、提携したい等、ご関心のある方は、TIP事務局 tip@dcaj.or.jp までご連絡ください!

<TIP2024 採択技術 紹介(順不同)>

【1】張力式振動生成機構を活用した装着型触覚デバイスHapbeat

Hapbeat合同会社 / 東京工業大学大学院 工学院 情報通信系 情報通信コース 長谷川晶一研究室
山崎勇祐

Hapbeatは張力式振動生成機構を利用する装着型触覚デバイスであり、従来の振動デバイスと比較して、小型でありながら広い周波数帯域にわたり高出力な振動を身体の広範囲に伝達可能であることが特徴である。
この特徴を実現する張力式振動生成機構はモーターの回転運動によって身体に接する帯を変位させることで振動を伝える仕組みであり、従来のおもりを動かした際の反力を利用する振動生成機構とは根本的に異なる。回転運動を振動源とするため、振動振幅に制限が生じず強力な低周波振動を出力可能であるとともに、可動部分が軽量なコアレスモーターを用いることで応答性が良く、高周波振動も同時に出力できる。また接触部分に糸や帯などの柔らかい素材を利用できるためデバイスの装着感も向上させることができる。
この機構を利用することで、使いやすく高性能な触覚デバイスを容易に実現できるようになり、触覚技術の利用拡大に貢献することが期待される。

【社会実装について】
個人向けとしては音楽や動画、ゲームなどのコンテンツ体験を向上させるための音響機器としての利用拡大を目指す。法人向けには現状で(1)興行施設などに向けた触覚の演出装置としての活用(2)病院や工事現場等に向けた確実に危険を伝える通知デバイスとしての活用(3)難聴者に向けた聴覚を代替する機器としての活用等が期待されるが、その他にも需要が見込める分野を適宜開拓していく。

【講評】
装着型触覚デバイスHapbeatは、小型かつ省コストであり、音楽ライブや花火イベント等、様々な場所での活用が見込まれる。高振幅な低周波振動を出力することにより、従来の振動子を超えた画期的なデバイスとなることを期待している。
佐伯 徳彦 委員(経済産業省 商務・サービスグループ 文化創造産業課長)


【2】Edible Lenticular Cuisine:レンズ形状のゼリーを活用した多視点からの見た目が変化する料理の提案

明治大学大学院 先端数理科学研究科 先端メディアサイエンス専攻 宮下芳明研究室
吉本健義

本技術によって、視点によって見た目が変化する食品を作ることができる。ゼリー素材を光学素子の形状に成形し、特殊な画像パターンと組み合わせることによってこれを実現している。開発したデザインシステムは、計算機によるシミュレーションと形状の最適化機能、および3Dプリンタを用いたファブリケーションとの連動によって、ユーザの意図した視覚効果をもつ食品の設計と生成が行える。ピッチや曲率半径などの形状パラメータを調整することで、視覚効果をデザイン可能である。この技術を活用した料理開発により、視点によって色彩や画像が変化する独創的な食の表現を開拓し、より豊かな食体験の創出を目指している。

【社会実装について】
私たちは技術開発のみならず、フレンチレストラン「élan vital」との共同研究によって本技術を活用した料理表現の開拓も進めている。その成果である「レンチキュラーサラダ」は、既に店舗で提供され、好評を博している。また、本技術の汎用性を高めるため、画像パターン自体も料理の一部として組み込む方法を検討中である。こうした製造方法が確立すれば、食品メーカーとの連携が可能となり、たとえばお菓子やスイーツに技術導入を行って、エンタテインメント性や驚きを伴う食品を普及させることもできると期待している。

【講評】
お菓子とデザートは、そもそも錯視のような楽しさを与えてくれる食べ物だ。そこを見事に組み合わせてきたのにはヤラレタという印象だ。個人的に錯視のプロジェクトをやっていたこともあり興味深く見ていたが、審査員全員の評価も高かった。いままでも3Dプリンタによるお菓子やデザートの出力はあったが、実際にレストランで供したり、製品化も視野に入れている点も評価できる。子供が作るキットなども楽しそうだ。
遠藤諭 委員長(株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員/MITテクノロジーレビュー日本版 アドバイザー/ASCII STARTUPエグゼクティブ・アドバイザー)


【3】HaptoRoom: 部屋全体を触覚インタフェース化する床材一体型デバイス

慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 Embodied Media Project
辻田 喜流、吉田 貴寿、小林 康平

生活を営む物理空間をインタフェースとして情報環境を利活用する空間コンピューティングの時代が到来した。HaptoRoomは、部屋全体のあらゆる表面を触覚インタフェースとして活用するための技術である。触覚インタラクションは、ウェアラブルやモバイルインターフェースにおいて注目されているが、部屋のあらゆる家具を個別にインタフェース化することは実運用上の困難がある。そこで本アプローチでは、床材と一体化したデバイスに圧力センサーと振動触覚アクチュエータを設置する。これにより既存の家具に追加の機器を付加することなく、部屋全体に再構成可能な触覚インタラクションを実現する。

<技術協力>
未踏アドバンスト事業:吉田・近藤・渡辺・橋本PJ
シードルインタラクションデザイン株式会社 神山洋一

【社会実装について】
HaptoRoomのアプローチは、部屋スケールにおいて、時空間的に制御可能な振動触覚を提供する。地面圧力センサから即時計測したユーザの歩行に合わせて即時のコンテンツ生成が可能なソフトウェアを開発したことにより、HaptoRoomとのコラボレーションによって、さまざまな分野で触覚を含むあらたな空間体験のアイデアを迅速に試すことができる。
たとえば、①美術館や科学館などの体験型施設において、視聴覚に加えて身体性の高い空間体験を提供することができる。また②エンターテインメント分野において、振動床を用いたより臨場感と没入感の高いコンテンツを提供することができる。さらに将来的には③介護福祉分野において、介護現場などでの見守りや通知・介入など、さまざまな領域に対して応用可能である。

【講評】
遊園地にある「びっくりハウス」が好きだった。部屋全体が体を震わせ私に話しかけてくる喜びがあった。HaptoRoomは部屋全体を触覚インタフェースとし、エンタメ要素満載、幼少の頃の喜びを再現してくれる。物理空間がデジタル情報とシームレスに融合することにより、機能面でも様々な可能性を秘めており今後の可能性を考えるのが楽しみである。
西村真里子 委員(株式会社HEART CATCH 代表取締役)


【4】セルフリオネット:指の力から全身アバタの運動を生成し、自在な操作と多様な触感を体験できるVRシステム

奈良先端科学技術大学院大学 サイバネティクス・リアリティ工学研究室
平尾 悠太朗
東京大学大学院情報理工学研究科 Cyber Interface Lab
橋本 健

指に力を込めるだけでバーチャル身体の自在な操作と多様な触感の体験を実現するVRシステム、Selfrionette(Self + Marionette)を提案する。Selfrionetteはマウスのような形状の力入力デバイスであり、指を固定して使用する。Selfrionetteを装着した状態でユーザが指に力を込めることで、バーチャル身体の手や足を含めた全身を動かすことができ、バーチャルなモノを持ちあげたり、バーチャル空間の中を歩行したりすることができる。また、本システムではバーチャル身体の操作だけでなく、バーチャルなモノや環境の物理特性に応じて、バーチャル身体を動かすのに必要な力の量を変化させることで、バーチャル物体の重さや硬さといった触感や、水中や沼道、坂道などのバーチャル環境の触感表現を可能とする。Selfrionetteによって、狭い空間やユーザのディスアビリティといった環境的・身体的制約の多様性を吸収し、誰もがどこでもVR空間に全身性を形成できる未来の実現を目指す。

【社会実装について】
Selfrionetteは、視覚や聴覚のみにおいてユビキタスであった時代から、身体的にもユビキタスな時代へと社会をアップデートできるポテンシャルがある。そのため、社会実装としてはエンタテインメント分野はもとより、教育や産業、医療など幅広い分野との連携を目指している。

【講評】
「手を上げて3D映像を操作する」― SF映画でよくみる光景だが、実際にやってみると、かなり疲れる。
身体をリラックスさせたままアバターを自在に操作できる本技術は、VRのヘビーユーザー、体力に自信がない人、身体に不自由のある人、様々な人がデジタル空間で自由に活動する上でなくてはならない技術だ。
南澤 孝太 委員(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD) 教授)


  • 本プログラムの審査委員会において、審査委員および所属する組織が候補技術に関与している場合は投票権を行使しておりません。
  • 先端テクノロジー社会実装プログラム(TIP)は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の後援を受けています。
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