テンセグリティは見た目が軽やかで不思議な雰囲気をまとう構造体のことをいいます。圧縮力を負担する剛体がお互いに接しないことが特徴的な構造体で、非常に軽量な割に強く、魅力的な構造体ですが、デザインすることも作ることも難しく、実際の建築に使われることはきわめてまれです。今回ご紹介する技術は、テンセグリティを実際に制作する際に、AR/MRの技術を援用する手法です。デモでは単純なユニットを複数結合して大きな曲面を作るプロジェクトでのAR技術の活用の様子を詳しく紹介します。建築では出来形管理という概念があります。これは、現在までに終了した施工部分が設計全体でどこまで進んでいるかという進捗管理と対になる考え方で、設計通りにきちんとできているかをその都度確認して管理することをいいます。AR技術を用いることで、設計のモデルと実際の施工を簡便に照合でき、視覚的直感的にわかりやすい検査が出来ます。本技術は、建築に携わる者ならだれもが興味を持つけれどもデザインも制作も難しくてあきらめてきたテンセグリティの構造体をAR技術でより身近なものにします。

審査委員講評

AR技術を利用し、視覚的にわかりやすくすることで、規則性の無い設計や複雑な設計など実際の施工が難しい建築も可能とする技術である。バーチャルの発想でリアルを作っていくというのが最近話題のサイバーフィジカルであるが、これもある種のサイバーフィジカルと言うことができるであろう。

© 千葉大学大学院 工学研究科 平沢研究室